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2023.08.07

地元に恩返しを。博多大丸の65周年記念プロジェクト「九州探検隊」のこれまでとこれから

地元に恩返しを。博多大丸の65周年記念プロジェクト「九州探検隊」のこれまでとこれから
九州の119市で「ひと・もの・こと」を発掘し、顧客に提供することで九州全体の活性化を目指す「九州探検隊」。株式会社 博多大丸の65周年記念事業の一環として始動し、5年が経過した今、大きなうねりを起こし始めています。博多大丸が創業70周年を迎え、九州探検隊について深堀すべく、2回にわたり連載をします。前編では九州探検隊が誕生した背景や取り組みについて取材。発足当時からのメンバーである、事業開発部九州探検隊担当の角田英一さんと箱崎純史さんに詳しく伺いました。

取材・執筆:神代裕子 編集:末吉陽子 撮影:音𣷓潤一(Photo Nagi)

 

 

各地の魅力を引き出すべく、九州・沖縄の119市の自治体を行脚


 

博多大丸で九州探検隊が正式に発足したのは2018年6月。背景には、65年周年の節目に、地元へ恩返しできる活動を展開したいという想いがあったと言います。

 

博多大丸 箱崎純史(以下、箱崎):「博多大丸が65年周年を迎えられたのは、地元福岡と九州のお客様のご愛顧のおかげです。その感謝の気持ちを込めて、われわれが主体的に九州の魅力を発信していくことで、皆さんのお役に立てるのではないかと考え、九州探検隊の発足にいたりました」

 

 

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九州探検隊を広めるためにアサインされた広報担当(当時)の箱崎さん

 

九州の魅力を発信するには、まず各地の情報を知ることから始めなくてはいけません。そこで豊富な知見と商談能力の高さに定評がある、角田さんに白羽の矢が立ちました。

 

博多大丸 角田英一(以下、角田):「九州探検隊の具体的な動きを検討するうちに、情報発信をするならその地域の情報に一番詳しい自治体の皆さんにお話を伺うべきだろうと考えました。そこで、まずは自治体に足を運んでお話を伺うと同時に、九州探検隊を『各市の情報発信を担うアンバサダー』として認定してもらうことを目指しました。私は九州の各市を回って、情報収集とアンバサダーとしての許諾を得る役割を担当することになりました」

 

 

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各地域への理解を深め、アンバサダー認定を得るため、119の市をすべて2往復以上したと話す角田さん

 

 

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自治体の熱意と角田さんの熱意が呼応したところとは、アンバサダー認定直後から具体的なプロジェクトのアイディアが次々と生まれました

 

行政と連携することから始めた九州探検隊。当初はまだ活動の実績がなかったため、まずは博多大丸の催事場などで、各地の名産品を販売することにしたそうです。

 

一度訪問して順調に話が進んだところもあれば、「自治体のメリットは何ですか?」と問われて何度も説明に行った市もあったとのこと。自治体の熱意と角田さんの熱意が呼応したところとは、アンバサダー認定直後から具体的なプロジェクトのアイディアが次々と生まれました。

 

 

「地域の知られざる一面」を掘り起こし、新たな切り口でイベントを企画


 

角田さんが九州の各市を行脚すること1年、最初のターニングポイントは2019年4月に博多大丸で開催した「九州『深』発見グルメフェア」でした。

 

角田:「『FM FUKUOKA』とのコラボで、九州で人気の道の駅6店舗の人気商品を集めた「街の駅」と題したコーナーをメイン企画に、九州中の人気店や隠れた名店、ご当地のアイテムを紹介しました。地元のタレントさんにラジオで宣伝してもらった効果もあり、多くのお客様に足を運んでいただくことができました」

 

順調に動きはじめていた九州探検隊でしたが、新型コロナウィルス感染症の拡大により、活動の自粛を余儀なくされます。現地を訪問できなくなったものの、自治体の協力もあり、オンラインでつながりの構築に励むことができたそうです。

 

そして次のターニングポイントが訪れます。それは単県での物産展の開催でした。

 

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「熱いぜ!宮崎展」宮崎餃子を中心に宮崎グルメが大集合

 

箱崎:「博多大丸で鹿児島、宮崎、熊本と単県の物産展を開催しました。物産展は遠くの地域を取り上げるイメージがあるので、福岡で九州県内の物産展を実施することに驚きの声もありました。しかし、同じ九州でも、まだまだ知らないことがたくさんあります。例えば2021年、宮崎市が餃子の購入頻度と支出金額で、宇都宮や浜松市を抜いて日本一になったのですが、知らない人が多いと思います。やはり九州は福岡市天神からその魅力を発信できる具体的な場があることは重要で、今まで他県への出店を控えていた人気の店舗も、九州を盛り上げるという地元愛から力を貸してくれるようになりました。発信に協力いただく地元のタレントも、地元愛が強く自分事として頑張ってくれるのも大きいです。そこで、餃子をメインに据えて『熱いぜ!宮崎展』を開催したところ、『うちの県もやってほしい』と声が上がるようになりました」

 

 

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「熱いぜ!宮崎展」日本一の宮崎餃子が大丸に登場

 

他にも、地域の魅力を知ってもらおうと、九州探検隊だからこそできる特別な体験価値を提供する「九州探検隊観光福袋」を企画。「ツアーに参加してその土地の魅力を感じていただけたら、きっと参加者がSNSなどでも口コミを広げてくださるだろう」と、博多大丸の利益を度外視した内容にしたとのこと。結果として、3つの市で各10組の参加者を募集したところ、約1000件を超える応募があるなど、よいPRが出来ました。

 

 

地域商社のような存在へ。九州探検隊が目指すこれからの姿


 

「もの」や「こと」を通して知り合った魅力的な「ひと」をホームページで紹介するなど、「ひと・もの・こと」をテーマに九州探検隊は熱心な活動を展開。2021年3月には専門の部署が設立され、九州探検隊のメンバーは6人に増えました。

 

現在は、委託事業として複数の市の地域おこしに携わるなど、活動の幅を拡大。九州119市のうち112市からアンバサダー認定を受け、ほとんどの市の物販を実施したと言います。

 

角田:「大事なのはここからです。物販だけに留まらず、各自治体にこれから注力したいことを聞きながら、それを実現するために動いていきたいですね」

 

最近は、テレビ西日本とのコラボで、博多大丸東館3階にあるスタジオで九州の魅力ある商品や期間限定商品を紹介し、その場でWEBサイトから購入できるライブショッピングを実施。そのための旬で希少性の高い期間限定商品を優先的に融通してもらうなど、各地とのつながりも深まっているそうです。

 

箱崎:「九州探検隊が発信力を高めることで、商品の売上アップにも貢献できます。九州探検隊がハブとなることで、生産者さんとお客様の間に『嬉しい』の循環が生まれていると思います」

 

活動の実績が蓄積されてきた今、今後の展望としては、成功した方法を横展開して、あらゆる地域を支援したいと考えています。

 

箱崎:「九州探検隊をもっと頼っていただけるように、しっかりと説明して回りたいですね。リアルな店舗があるのも、広告代理店にはない強み。今後は、地域商社のような頼れる存在になっていければと思っています」

 

アンバサダー認定も、残すはあと7市。「今年中にはすべての都市と認定を結ぶ予定」と角田さんは語ります。

 

角田:「残りの市からはすでにご賛同はいただいているので、あとはアンバサダーの認定式を行うだけ。認定が済んだらより具体的な取り組みをどんどん進めていきますので、これからを期待していてください」

 

5年かけて築いてきたつながりを、より一層深めていくために短期的な取り組みではなく、地域との関係性を長期的に築いていく姿勢を持つ九州探検隊ならでは活動に注目です。

PROFILE

  • 角田 英一

    株式会社博多大丸 営業統括部 事業開発部スタッフ 九州探検隊担当

     

    隊員No.001。1987年入社。食品売り場や外商、婦人服売り場を経て2017年に販売促進部へ異動。九州探検隊発足時に、各市とアンバサダー認定を結ぶ重役を託され、活動を開始。九州・沖縄119市を2往復以上した実績を持つ。

  • 箱崎 純史

    株式会社博多大丸 営業統括部 事業開発部スタッフ 九州探検隊担当兼広報担当

     

    隊員No.002。1993年入社。紳士服や食品のバイヤー・マネージャー、外商などを経て、広報担当へ。九州探検隊の活動には広報が欠かせないとのことで、結成当初からメンバー入りを果たす。テレビやYouTubeなど出演も果たす、博多大丸の名物広報担当。