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2023.03.06

新しい才能の種を育てる。「2030 プロジェクト」プランターができるまで

新しい才能の種を育てる。「2030 プロジェクト」プランターができるまで
この春に始まる、JFR グループの新しい取り組み「2030 年ありたい姿プロジェクト」。グループ各社が一丸となって進めるこのプロジェクトは、「文化で体温を上げる」というキャッチコピーを掲げ、JFR グループの目指す企業像と、社会に向けてどういった価値を提供できるかの共通認識を、アップデートするために発足しました。今回は、「文化で体温を上げる」ことをより体感するために立ち上がった 3 つの取り組みのうち、プランター企画について、株式会社パルコ 宣伝部の小林啓太さんにお話を伺っていきます。

執筆:阿部 洋子

 

 

プランタープロジェクトとは。


 

 

 

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小林 啓太(写真右)
株式会社パルコ 宣伝部
2010年入社。全国パルコでの営業企画や外部企業タイアップを担当。

 

2030 年ありたい姿プロジェクトについてはこちら

 

 

――プランター企画が立ち上がった経緯について教えてください。


小林 啓太(以下、小林):「文化で体温を上げる」というコピーが決まったところで、プロジェクトをさらにもう一歩先に進めたいという話になりました。その際に、メッセージをより体感してもらうため、見るだけ読むだけではなく、何かを手に取って自分で行動を起こしてもらえる企画ができたらいいよねということになったんです。そこで、3 つの企画が立ち上がりました。そのうちのひとつが、僕がメインで担当しているプランター企画です。缶の中に水で膨らむ固形の土と種が入っている栽培キットで、缶がそのままプランターになり、植物を育てられるというものです。


JFR グループの強みは、やはりいろんな文化を醸成してきた歴史があることだと思うんです。僕たちパルコは、インキュベーションと呼んで、有名無名かは関係なく、多くのアーティストに発表の場を作り、世に出していくということをずっとやってきました。これは文化的な取り組みであり、誇るべきことです。そこで、プランター側面のパッケージをキャンバスにし、全国各地域で施設運営を担うチームが選定したアーティストに、グラフィックを作っていただくことにしました。そして、このプランターをグループ従業員全員に配布します。そうすれば、従業員に広く「文化で体温を上げる」の一例を見せることができるし、プロジェクト自体の周知もできるかなと。

 


――プランターは全部で何種類あるのですか?


小林:カモミール、イタリアンパセリ、タイム、スイートバジル、ペパーミント、パクチー、マリーゴールド、ミニ青梗菜の計 8 種類で、初心者にも育てやすいものをセレクトしています。さらにプランターのパッケージは 8 名のアーティストに参加していただいているので、組み合わせは全部で 64 通りあります。缶の中には各アーティストのプロフィールカードも入っています。

 

 

――今回参加されたアーティストの方はどういう基準で選定されたのでしょうか?


小林:それこそ有名無名を問わず、フレッシュな若手から知名度の高い方まで、それぞれの施設とゆかりのある方を選んでいます。先ほどお話ししたインキュベーションの歴史を踏まえ、いろいろな才能を応援していきたい、こういう取り組みをグループとしてもどんどんやっていきたいというメッセージを込めています。

 

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新しい才能の種を育てる集団でありたい。


 

 

――さまざまな選択肢の中から、プランターを選んだ理由を教えてください。


小林:ひとつは個人的な思いなのですが、僕自身は絵も描けないし、ものも作れない。でも、パルコという会社に入って、アーティストの発表の場を作って世の中に発信していくという役割を、いろいろな企画を通してさせていただきました。自分は何も作れないけれど、間に入ることによって、何か新しいものが生まれたり、誰かに新しい才能を届けたりできる。それがすごく嬉しくて、自分でも誇りに思っているんです。プランターを選んだのも、その才能のタネみたいなものを植物の種子になぞらえて、新しい芽が育っていくような活動になればいいなと思ったんです。

 

もうひとつは、企画当時はコロナの収束が見えない中で、なんとなく会社に漂う雰囲気も沈んでいるように感じたんです。企業として売上を伸ばすことはもちろんやっていかなければいけないけど、こういうときだからこそ、文化的な価値を見いだしていく活動を、これまで通りどんどんやっていこうよというメッセージを込めたかった。ただ言葉で伝えるだけじゃなく、そういう思いを体感できるものとしてプランターという形がふさわしいと感じたし、グループ皆さんの手元に届けたいと思いました。

 


――小林さんの所属するパルコは、特にそういったインキュベーション活動に力を入れてこられた印象があります。


小林:パルコの社員には、言わずとも文化を大事にしている感覚があると思いますし、すでに何十年も先輩たちが築き上げてきた歴史があるので、今さら僕がわかったようなことを言うのもおこがましい話ではあるのですが(笑)。以前、渋谷 PARCO の準備室に在籍していた際、パルコの昔の広告を改めて勉強したことがあったんです。その中ですごく印象的だったのが、渋谷 PARCO がオープンしたときの広告。アートディレクターの石岡瑛子さんによる作品なのですが、黒人の女性がドーベルマンを抱き、白人の男性が子ヤギを抱えているビジュアルなんですね。渋谷 PARCO がオープンした 1973 年の社会は、今よりももっと男性が強くて、女性はその後ろにいるべきだという価値観が強かったと思います。ですが、その広告では社会通念を逆手にとり、当時、当たり前とされていたことに対して「いや、そうじゃないんじゃない?」としなやかに問題提起していた。そういうのって、すごくかっこいいなって思うんですよね。そういう歴史も今回の「文化で体温を上げる」というコピーに託しています。

 

 

 

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――そういう社風は、JFRグループのほかの会社にも共通してあるものなのでしょうか。

 

小林:そうですね。今回改めてJ.フロント リテイリングや大丸松坂屋百貨店の人たちともたくさん会話を重ねていく中で、社会に対する倫理感や意義のようなものを大事にしていきたいという思いは、私たちパルコチームと共通して持っていたんだと感じました。

 

 

自分の思いを形にできる環境がある。


 

――このプロジェクトを通じて、JFR グループの方々にこういうことが伝えられたら、と思うことはありますか?


小林:今回のプランター企画のような植物を主役にしたプロジェクトは、普通に仕事をしていたら接することができなかったと思うんです。グリーンを使って何か作るというアイデアは、今回協力していただいた〈SOLSO PARK〉さんへ、コロナ禍によくプライベートで行っていたことから生まれたもの。植物に囲まれて過ごしているうちに、そこにアーティストを結びつけるというアイデアを思いつきました。普段の仕事とは一見関わりのないように見えても、「面白いかも」と思えば、提案次第で実現できることもあると思います。

 

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――今回、「2030 プロジェクト」の立ち上げに参加してない方たちの中から、この活動を見て「こういうことができるんだ」「自分もやってみたい」と思う人が出てくるといいですね。


小林:そうですね。今回、たまたま僕はプロジェクトの一員として立ち上げに参加して、会社もそれを応援してくれました。「2030 プロジェクト」内の別プロジェクト、「生ゴミを堆肥に変えるコンポストと屋上菜園づくり」も同様に、発案者の思いが形になった企画。そういう意味で、僕たちみんなにチャンスが開かれている環境だと思います。また、「RED」は、まさに会社や部署を越えて、自分のやりたいプロジェクトを企画し、グループ全社を巻き込んで支援する体制を作り出す場です。「こんなことがやってみたい」という思いがある人は、ぜひこのチャンスを生かしてほしいなと思います。「新しいことに、ともに挑戦していきましょう!」と伝えたいです。