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2023.02.20

消費科学研究所ってなにをするところ? 初開催「ヘアケアEXPO」のブースを直撃

消費科学研究所ってなにをするところ? 初開催「ヘアケアEXPO」のブースを直撃
コスメショップ・サロン・化粧品メーカーなどが一堂に会する、ヘアケア製品の開発・流通のための商談展「第1回ヘアケアEXPO」に消費科学研究所が出展しました。J.フロント リテイリンググループの消費科学研究所は、主に様々な消費財の品質や食の安全安心などをチェック、評価する仕事を請け負っています。今回、あまり知られることのない消費科学研究所の歴史や取り組みを知るべく、ヘアケアEXPOに出展中のメンバー3人を取材しました。

編集:末吉陽子 執筆:村瀬美穂 撮影:椎名トモミ

 

90年以上にわたり積み重ねてきた品質管理技術


 

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――まずは、消費科学研究所について簡単に教えていただけますでしょうか?

 

南 信彦(以下、南):消費科学研究所の歴史は古く、1927年(昭和2年)に、株式会社大丸大阪店(現・心斎橋店)に開設した染色試験室・衛生試験室がはじまりです。1986年に株式会社消費科学研究所として独立し、2007年には大丸と松坂屋の経営統合に伴って、松坂屋の品質管理業務も統合して現在に至っています。

 

 

――90年以上の歴史があるんですね。そもそも、なぜ染色試験室・衛生試験室を開設することになったのでしょうか?

 

南:染色試験室・衛生試験室の設立当時は、JIS(日本産業規格)もなかった時代でしたが、大丸で販売する商品を対象に、自分たちで科学的に商品基準や試験方法を考え出しました。繊維製品の基準については、今もJISの「色泣き試験」に、「大丸法」という名前として残っています。規格だけでなく、衛生上の注意や品物のお手入れ方法などを記した、今でいう取扱説明書のようなものも独自に作成し、配布していたそうです。

 

 

――時代を先取りしている取り組みですね。現在の消費科学研究所では、どのようなミッションを掲げているのでしょうか?

 

南:「安全・安心で豊かなくらしの価値を共創する」が研究所のミッションです。私たちは生活者の安全安心なくらしをお守りしたい、そして、より豊かなくらしのお役に立ちたいという志のもと、品質試験や検査業務に励んできました。昨今は食品を中心に幅広い分野で、生活者や事業者の中で「安全安心」への意識が高まっています。さらに、「サステナビリティ」や「Well‐Being‐Life」への関心も高まってきており、私たちが消費者の方に直接働きかける機会は少ないのですが、事業者に対して商品の安全性やその価値を高めるお手伝いをすることで、消費者に貢献したいと考えています。

 

 

 

技術の蓄積はお客様と向き合ってきた軌跡


 

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――百貨店は「商品を仕入れて販売する」のが基本だと思うのですが、なぜ“川上”での品質向上まで追求しているのでしょうか?

 

南:百貨店が販売する製品に対するお客様の期待値は非常に高いので、製造者だけでなく販売者も責任をもたなければいけない、という使命感があるからです。百貨店は買い物をされるお客様の窓口で、日常的に様々なご要望が寄せられます。ときには、洋服の不具合や味・食感の違和感など、商品の品質への不満のお声もあります。

 

お客様からのお声をいただいたときは、原因を探るところからアプローチをしていきます。このプロセスは、研究所としての品質試験の知見が発揮される部分です。もちろん、事前の品質チェックには余念がありません。特に食べ物は、アレルギーの記載漏れや間違いなどがあれば健康被害に関わりますから、確認にあたり手を抜けません。

 

 

――商品を売った後に行う対応や改善が、百貨店品質を作っているのですね。

 

朝野 芙弥(以下、朝野):百貨店に訪れるお客様は、アフターケアも含めた、高いレベルでの“お買い物体験”を求めています。消費科学研究所は、その期待を保証する、品質のトータルソリューションカンパニーです。良い製品を世に送り出すという意味で、間接的な関わりではありますが、お客様の暮らしの質を高める一助になれたら本望です。

 

 

スタートアップにこそ消費科学研究所を活用してほしい


 

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――今回「第1回ヘアケアEXPO」のブースでは、化粧品、美容家電など、ヘアケア製品の開発に役立てるための毛髪評価試験を紹介されているそうですね。毛髪評価試験とは、どのような試験なのでしょうか?

 

朝野:機械を用いて髪の毛のなめらかさ、ハリやコシ、うるおいというような感覚的な状態を数値化し、評価する試験です。例えば、髪がしっとりするかどうかを測る「水分量測定試験」、髪のキューティクルの状態を知る「表面撮影」といった試験があります。

 

 

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――毛髪評価試験は、どのような企業が利用しているのですか?

 

森 彬光(以下、森):ヘアケア製品を製造するメーカー様などが多いです。お客様から「こういう試験をしたい」とお問い合わせをいただいたら、こちらから試験内容や条件を提示した上で、試験を行います。多くの場合は、お客様も具体的にどう試験を行ったらいいのかわからない段階でお問い合わせをいただくため、双方で試験方法をどうするか、打ち合わせからはじめることがほとんどです。

 

 

――まさに試験を設計していくのですね。今回のEXPO出展には、どのような狙いがあったのでしょうか?

 

南:一番の狙いは、毛髪評価試験や消費科学研究所を広く知ってもらうことです。毛髪評価試験は事業として行っている試験機関の数が少なく、試験もまだまだ知られていません。これまで美容師さんやヘアケア製品の開発者の方が感覚や経験則で判断してきた指標を数値化し、誰にでもわかるデータにできるということを伝えるため、今回のEXPO出展の運びとなりました。さらに言えば、消費科学研究所を知った方が次のステップとして、自社の商品でこの試験をどのように使えるのか、どんな商品開発につながるのかをご検討いただき、お問い合わせしていただけたらと考えています。

 

 

――今後、どのような分野へ進出していきたいなど、希望はありますか?

 

森:じつはコロナ禍になって、毛髪の事業が伸びてきています。おそらくおうち時間が増えるなどして、ビューティー&ウェルネス、美と健康への関心がとても高まっているからだと推測しています。毛髪試験はひとつのきっかけとして、ヘアケアの分野でできることを増やす、あるいは毛髪検査の技術を違う分野の検査に派生させることにもチャレンジしたいですね。

 

朝野:個人的にはPRや販売について、法律的な部分のフォローができるようにと構想しています。例えば衣料品では、タグに品質表示がついているのをご覧になったことがあるかと思います。この品質表示の形式はすべて法律で決められています。商品を店頭で販売するときや広告を打つときに、少しの言い回しが法律に抵触する、ということもありえます。今後はPRや販売に使う言葉やパンフレットなどの表現を、安心して使えるようにお手伝いすることも考えたいです。

 

南:大手企業と一緒にお仕事をすることも多いのですが、消費科学研究所は、0→1を作り出す企業やスタートアップとも親和性があります。ローカルビジネスで中小規模の企業様や、新規事業で品質向上を目指したい企業様にもぜひ、消費科学研究所の活動を知っていただきたいですね。

 

PROFILE

  • 南 信彦

    株式会社消費科学研究所 営業企画部長

     

    1987年 株式会社大丸(当時)入社

    レディスファッション、人事などを経て2011年3月より株式会社消費科学研究所勤務。

    営業部門として、持続的な成長を実現するための新しいチャレンジを推進。

  • 朝野 芙弥

    品質管理室 繊維・雑貨グループ 技術主任 繊維製品品質管理士 毛髪診断士

     

    2004年4月 株式会社消費科学研究所 入社

    繊維製品の品質検査や百貨店にお申し出のあった苦情品の原因究明、表示点検などの業務を経て、2019年から毛髪試験を担当。

    これまでに3度の育児休暇を取得し、女性に優しい職場に安心しながら仕事、家事、子育てに邁進中。

  • 森 彬光

    品質管理室 繊維・雑貨グループ 技術主任 毛髪診断士

     

    2008年3月 株式会社消費科学研究所 入社

    入社以降、一貫して化粧品・毛髪の各種評価業務に携わる。

    休日は釣りと子供の習い事に奔走する2児の父。