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2025.11.27

本気の熱意が拓く、高知発「地域共栄」の未来。100回の試作で導いた「しあわせミルクサブレ」の開発ストーリー

本気の熱意が拓く、高知発「地域共栄」の未来。100回の試作で導いた「しあわせミルクサブレ」の開発ストーリー
高知の中心街に店を構える高知大丸。長く地域の人々に愛されてきたこの百貨店は、いま大胆な挑戦に踏み出しています。それは、JFRグループが掲げる「地域共栄」の理念のもと、地元の生産者や事業者、クリエイターと手を取り合う「オール高知」のものづくりです。 その象徴として生まれたのが「しあわせミルクサブレ」。この焼き菓子に込められているのは、関わった人たちの妥協のない挑戦と、高知を良くしたいという情熱です。誕生の背景や思いについて、雪ヶ峰牧場の野村泰弘牧場長、地元菓子メーカー・スウィーツ社の埜口英一会長、高知大丸の小島尚社長、大丸松坂屋百貨店の稲垣貴之・田端優バイヤーに伺いました。

取材・執筆:ミノシマタカコ 編集:末吉陽子

 

 

はじまりは、熱意のリレー。バイヤーが動かした共創の歯車


 

――今回のプロジェクトが生まれた背景には、地方百貨店のあり方に対する課題意識があったと伺いました。その現状について教えてください。

 

高知大丸 代表取締役社長 小島尚氏:地方百貨店は、インバウンドの恩恵もなく、ラグジュアリーブランドを抱えているわけでもないため、「戦う武器」が欲しいという思いがありました。そこで目を向けたのは、高知が誇る食材の力です。

 

高知には日本一を誇れる食材がたくさんあります。ただ、生産者の皆さんは売り方があまり上手ではないんです。たとえば、ものすごく甘くて美味しいトマトがあるのに、その価値を伝えきれず単品で安く販売されて終わってしまうことも多いんです。

 

こうした状況を変えるために、地方百貨店として何ができるのかを模索するなかで、「地域の生産者と手を取り合い、地元の魅力をともに発信していくこと」が見えてきました。大丸松坂屋やJ.フロントリテイリング(JFR)のネットワークを生かし、高知で消費するだけではなく、全国に広げることが地方百貨店に求められている役割だと考えました。

 

「地方百貨店は地元のことをよく知っている。ただ、高知大丸だけでは力不足なこともあるので、全社の力で新たな道をひらくことができた」と語る、高知大丸の小島社長)

「地方百貨店は地元のことをよく知っている。ただ、高知大丸だけでは力不足なこともあるので、全社の力で新たな道をひらくことができた」と語る、高知大丸の小島社長

 

――大丸松坂屋百貨店のバイヤーは、どのような経緯でこのプロジェクトをスタートさせたのでしょうか。  

 

大丸松坂屋百貨店 バイヤー 稲垣貴之氏:本社が支援して、ローカル・コンテンツを生かした新しい菓子を生み出せないかという発想から、このプロジェクトが始まりました。私は高知に土地勘がないのですが、何社もの製造会社や生産者の方々を訪ね歩きました。スウィーツさんを訪問したとき、最初に雪ヶ峰牧場を案内していただいたのですが、「ここしかない!」と感じました。

 

東京ドーム25個分もの広大な雪ヶ峰牧場では、約70頭のジャージー牛を牛舎ではなく放牧地で、24時間365日放し飼いしています。「日本一幸せな牛のいる牧場」と紹介されるように、牛たちはストレスなく、自然のままに暮らしています。実際にその様子を見て、作り手と素材の両方が同時に見つかったような感覚になったのです。スウィーツさんと雪ヶ峰牧場のミルクでなければ実現できない菓子があると確信しました。

 

高知の素晴らしいものを全国に届けたいという強い気持ちからスタート。「間違いなく良い商品ができる確信があった」と稲垣バイヤー

高知の素晴らしいものを全国に届けたいという強い気持ちからスタート。「間違いなく良い商品ができる確信があった」と稲垣バイヤー

 

――稲垣さんは運命的な出合いを予感していた一方で、スウィーツ社の埜口さんは当初、大丸松坂屋からの提案を断ったとお聞きしました。

 

株式会社スウィーツ 代表取締役会長 埜口英一氏:私たちは、製品として世に出す以上、市場で「確かな競争力」を持つものを作りたいと考えています。OEM(他社ブランド製品の製造)をお引き受けする際も、単なる受託ではなく、自社の技術を最大限に生かし、「唯一無二」の商品を生み出すことを目指しています。

 

そして、その取り組みが継続的に生産者を支援し、地域の力になるものでなければ意味がないと考えています。地域にある産品をわれわれの技術で加工し、ブランド価値を高め、産業として根づかせていく。それが私たちの理念です。

 

そのためには、相手先様に「本気で取り組む覚悟」がなければ、決して成り立ちません。今回のプロジェクトも、開発に7ヵ月を要しました。膨大な労力と時間がかかります。だからこそ、相手に継続的な覚悟がなければ、とても続けられません。それがお断りした理由のひとつでした。

 

さらに、大丸松坂屋さんから最初に提示された販売計画では、販路の重複がありました。高知のお土産菓子のマーケットはわれわれが育てたものです。市場を拡大するのではなく、喰い合うのでは、みんなが消耗してしまいます。そうした背景もあり、一度お断りする判断をしたのです。

 

「地域にある産品を、我々の技術で加工して、ブランドイメージを上げながら産業化するのが我々の理念」と語るスウィーツ社の埜口会長(左)と、「しあわせミルクサブレ」の商品開発を担当した濵口純矢さん(右)

「地域にある産品を、我々の技術で加工して、ブランドイメージを上げながら産業化するのが我々の理念」と語るスウィーツ社の埜口会長(左)と、「しあわせミルクサブレ」の商品開発を担当した濵口純矢さん(右)

 

大丸松坂屋百貨店 稲垣氏:実は、私は本来の担当がお酒ということもあり、菓子づくりに関しては勉強が足りず、スウィーツさんへの最初の提案は抽象的だったと思います。「本当に高知を発信しようとしているのか」「本当にお菓子を作る気があるのか」ということが上手く伝えられませんでした。

 

――それでも、プロジェクトが進んだのはなぜでしょうか。

 

大丸松坂屋百貨店バイヤー 田端 優氏:私は、菓子メーカーから転職してきたキャリアで、菓子担当ですが、稲垣から最初に話を聞いたときから強く心を惹かれていました。スウィーツさんにお断りされてしまったのですが諦められず、何度も販路戦略の見直し案を持ち込みながら、粘り強く交渉を重ねました。

 

スウィーツ 埜口氏:正直に言えば、お話を受けるつもりはありませんでした。けれども、お二人が真摯に、そして何度も熱意をもって語ってくださる姿を見ているうちに、「この人たちは本気だな」と感じました。

 

偉そうに映るかもしれませんが、対等なパートナーとして真剣にものづくりに取り組むためには、双方の熱意が欠かせないんです。信頼関係を構築するには、共通の覚悟が必要だと思っています。

 

大丸松坂屋百貨店 田端氏:お断りされても諦めなかった理由としては、スウィーツさんのお菓子作りの理念や技術力に惚れ込んでいたことと、雪ヶ峰牧場の唯一無二の魅力です。雪ヶ峰牧場の知られてない魅力、知名度を全国的に上げていくという意味では、大丸松坂屋が貢献できると思いました。

 

双方の話し合いのなかでも「雪ヶ峰牧場の魅力を広げたい」という方向性は合っていたので、「販路を住み分けて、一緒に雪ヶ峰牧場を広めていきましょう」と提案することで、プロジェクトが大きく動き出すことができたのです。

 

「洋菓子の会社で商品開発をしていたので、スウィーツ社の素材の味を最大に引き出す技術力がよくわかります。どうしても一緒に仕事がしたいと思いました」と語る田端バイヤー

「洋菓子の会社で商品開発をしていたので、スウィーツ社の素材の味を最大に引き出す技術力がよくわかります。どうしても一緒に仕事がしたいと思いました」と語る田端バイヤー

 

 

唯一無二のミルクが生きる。100回の試作が生んだ究極のくちどけ


 

――大丸松坂屋百貨店のバイヤーが惚れ込んだ「雪ヶ峰牧場」。そこで生産されたミルクはどのような特徴を持っているのでしょうか?

 

雪ヶ峰牧場 牧場長 野村泰弘氏:雪ヶ峰牧場は、父が120ヘクタールの山を開墾してつくり上げた牧場です。木の根を引き、トラクターで土を掘り起こしていくのですが、通常は30cmほど掘れば十分なところを、父は「俺は1m以上掘るんや」と言って、何倍も深く掘り進めました。そうすることで土壌の保水力が高まり、草の育ちが驚くほど良くなるんです。牛たちは良く育った自然の草を食べ、その栄養を糧に安心で安全、そして力強い味わいのミルクを出してくれます。

 

スウィーツ 埜口氏:雪ヶ峰牧場のミルクは、あの環境でしか生まれないものなので、本当に唯一無二の宝物です。そこで、雪ヶ峰のミルクの風味をそのまま生かすために、社内でバターをいちから仕込みたいと考えました。お菓子メーカーでバターそのものから作るというのは、ほとんど例がないと思います。ただ、ホモジナイズ(均質化)した乳ではバターを作れません。そのため、野村さんに無理をお願いして、生乳のまま分けてもらうことにしました。

 

雪ヶ峰牧場 野村氏:うちでは一日に50頭ぐらいミルクを絞って、バルククーラー(生乳冷却システム)で冷やして品質を保持しています。通常は、それを「ひまわり乳業」さんに届けるのですが、生乳が必要ということでスウィーツの担当の方に昔ながらの「乳缶」で取りに来ていただいています。牧場から5分〜10分ぐらいの場所なので、新鮮なまま、すぐにスウィーツさんの工場ラインに入る。時間も短縮できて、非常に衛生的で、いいバターが作れていると思います。

 

「日本全体でもわずか1%ほどしか飼育されていないジャージー牛のミルクには強いインパクトがあります」と語る野村牧場長。獣医師の資格も持つ

「日本全体でもわずか1%ほどしか飼育されていないジャージー牛のミルクには強いインパクトがあります」と語る野村牧場長。獣医師の資格も持つ

 

――牧場と工場が一体になっているようなお取り組みですね。では、その新鮮なミルクを生かしたお菓子づくりの中で、特に苦労された点はどんなところでしたか。

 

スウィーツ 埜口氏:製品づくりでは、まず唯一無二であることを意識しました。雪ヶ峰牧場のジャージー乳が持つ深いコクと旨味、そして牧場そのものがまとっている「しあわせの空気」。それをどうやって味とお菓子で表現するかが、大きな課題でした。

 

まずは、ミルクの風味をいかに引き出すかを工夫しました。簡単そうに思われがちですが、焼き菓子でミルクらしさを出すのは意外に難しいんです。生地づくりには約4ヵ月をかけました。色合いや風味も大切でしたが、最も苦心したのは口どけです。最終的にたどり着いたのは、小麦粉に少し米粉を加える方法でした。米粉を使うことで口どけがより繊細になり、同時に生地の色合いもやさしい白に近づく。結果的に、この選択が「しあわせミルクサブレ」の印象を決めるポイントになりました。

 

生地が完成したあとは、一口目で感じるミルク感をどう際立たせるかを追求しました。試作を重ねた末に、当社で雪ヶ峰牧場のしぼりたてジャージー乳を使い、独自のミルクパウダーを開発しました。牧場の味わいと香りをそのまま閉じ込めるための、私たちなりの答えです。

 

「製品づくりではまず『唯一無二であること』を考えます。雪ヶ峰牧場のジャージー牛のコクのある旨味と、牧場の持つしあわせなイメージをお菓子で表現した」と埜口さん

「製品づくりではまず『唯一無二であること』を考えます。雪ヶ峰牧場のジャージー牛のコクのある旨味と、牧場の持つしあわせなイメージをお菓子で表現した」と埜口さん

 

大丸松坂屋百貨店 田端氏:試作は全部で100回以上行ってくださったそうです。私がお願いしたのは4回だったと思いますが、ひとつの依頼に何十回も試作を重ねてくださいました。こちらからは「より優しさが伝わるホロホロ感を出してほしい」といった抽象的な要望ばかりだったのに、それを具体的な形にしてくださったので本当に感激でした。

 

――味も素晴らしいですが、柴田ケイコさんのイラストも、商品のしあわせで優しい感じを伝えています。

 

大丸松坂屋百貨店 稲垣氏:企画の初期段階から、雪ヶ峰牧場の魅力を全国に届けるためには、パッケージが重要な鍵になると考えていました。当社のノウハウを生かせるところでもあります。しかし、最初に候補に挙げたイラストレーターの方々は、もうひとつしっくりきませんでした。そんな中、高知でさまざまな方に相談していく過程で、「絵本作家の柴田ケイコさんが良いのでは」と、アイデアをいただいたんです。

 

高知大丸 小島氏:イラストの候補に柴田さんの名前を聞いて、ピタッとパズルがはまったような感覚がありました。というのも、高知大丸で開催している地元のものを発信する「伝え場」で、柴田さんの展覧会を約3年前から続けていたご縁があったからです。ぜひパッケージのイラストを描いていただきたいと、高知大丸のルートで柴田さんにご依頼しました。

 

スウィーツ 埜口氏:柴田さんとのコラボによる絵本のようなデザインは、これまでの当社にはなかった発想でした。これまでデザインは社内で完結していましたが、今回のように柴田さんを起用するという企画力、そして大丸東京店をはじめ一大集客地での販売ネットワークなど、大丸松坂屋さんの組織力に支えられました。

 

大丸松坂屋百貨店 稲垣氏:販路に課題があったのですが、小島社長にも東奔西走していただき、県外では大丸松坂屋のオンラインショップと各店でのPOP UP、東京と大阪にある高知のアンテナショップ、羽田空港のJALショップ、柴田さんのファン層が参加される「東京クラフトフェスティバル」などの大型イベントでの採用と、広げることができています。

 

「企画の最初からパッケージが差別化のカギだと考えていました」と稲垣バイヤー。地域の「ご縁」が絵本作家の柴田ケイコさんとつながっていく

「企画の最初からパッケージが差別化のカギだと考えていました」と稲垣バイヤー。地域の「ご縁」が絵本作家の柴田ケイコさんとつながっていく

 


地域と共に育つ。「しあわせの循環」が次の挑戦を生む



――このプロジェクトを通じて、ものづくりに対する見方にどんな変化や気づきがありましたか。

 

雪ヶ峰牧場 野村氏:うちの牛乳を使った商品が、大手のデパートで販売されることは、本当に誇りに思っています。高知県内だけでなく、遠く離れた消費者にも味わっていただける、雪ヶ峰牧場を知っていただける、そういう機会に感謝しています。そうした商品で扱っていただくからには、「他にはない牛乳を届けたい」という思いも自然と強くなります。全国の不特定多数の方に届くと考えた場合、品質管理はこれまで以上に慎重に行う必要があると考えています。

 

おかげさまでジャージー乳の増産のお声がけもいただいていて、頭数を増やす必要があります。ただ、牛は妊娠から出産まで約285日かかり、搾乳できるのは2歳を過ぎてから。今は50頭を搾乳し、将来的には70〜80頭まで増やす計画です。

 

スウィーツ 埜口氏:雪ヶ峰牧場はもともとポテンシャルの高い存在ですが、その潜在力を考えると、中国四国全体を代表するブランドになり得ると感じています。今回の取り組みを通じて、高知という枠を越え、より広い視点で「地域の価値」を考えるきっかけをいただきました。本当にありがたい経験だったと思っています。

 

「しあわせミルクサブレ」の発売はスタートでしかありません。これからお客さまの反応を見ながら、製品の手入れをしていく予定です。ここからさらに関係者全員で商品を育てていく必要があると考えています。

 

今回のプロジェクトで、改めて「地域の価値」のポテンシャルを再認識。雪ヶ峰牧場のブランディングの可能性を今後も追及する

今回のプロジェクトで、改めて「地域の価値」のポテンシャルを再認識。雪ヶ峰牧場のブランディングの可能性を今後も追及する

 

――今後の展開について、どのようなビジョンを持っていますか。

 

大丸松坂屋百貨店 稲垣氏:「しあわせミルクサブレ」は絵本のようなパッケージデザインにしたのですが、シリーズ化ができるのではないかと僕は思っています。今回はシンプルなミルクパウダーでしたが、ホワイトチョコレートもイメージに合うと思います。埜口さんと相談しながら、第二弾、第三弾……と、雪が峰牧場のブランディングにつながる製品を作りたいですね。

 

大丸松坂屋百貨店 田端氏:雪ヶ峰牧場のミルクサブレをさらに広げるために、稲垣と一緒に全国で販路開拓をしていきたいですね。商品全体のコーディネートについては、本当にとてもうまく取り組みが進んだと思っています。商品の魅力には自信を持っているので、それを伝わるように販路を拡大してPRしていきたいと考えています。そのツールとして、現在のしあわせミルクサブレは10個入りですが、気軽に手にとっていただける小さいサイズの開発も検討したいと考えています。

 

「たとえ時間がかかっても、販路の拡大を着実に進めていくことが必要なフェーズ」と語り合う、稲垣バイヤーと田端バイヤー。大阪KITTEで開催した販促イベントにて

「たとえ時間がかかっても、販路の拡大を着実に進めていくことが必要なフェーズ」と語り合う、稲垣バイヤーと田端バイヤー。大阪KITTEで開催した販促イベントにて

 

高知大丸 小島氏:今回地元の人の反応を見ると、「百貨店がお菓子を作ったんや」という価値がすごく高いと感じました。お菓子ブランドを誘致するのではなく、百貨店が音頭をとって、地元の生産者・製造者をつなぎながら開発の中核を担うことは、意義があることなんだと気づきました。

 

地方百貨店の実情は厳しく、閉店してる店も多くあります。だからこそ、「しあわせミルクサブレ」をしっかりと1つの成功事例にしたい。今回の取り組みは、地方百貨店の新しい戦略や生き残りのヒントに繋がると思っています。

 

――最後にJ.フロントリテイリングが掲げている「地域共栄」への想いをお聞かせください。

 

高知大丸 小島氏:今回の対話のなかで、「唯一無二」や「地域の価値」といった言葉が何度も出てきました。私自身も、企業としての「存在価値」を明確に見据えることが何より重要だと感じています。

 

では、「高知大丸の存在価値とは何か」。それは、高知で唯一の百貨店であるという事実に尽きます。高知で大丸を知らない人はいませんし、誰もが一度は足を運んだことがある。けれど、それだけで応援されるわけではありません。地元のために知恵を絞り、汗をかき、実際に動き続けているからこそ、応援していただけるのだと思います。

 

土佐では昔から「なんちゃじゃない(どうってことない)」という言葉をよく使います。世話焼きで、困っている人がいれば自然と手を差し伸べる。大都市とは違って、知事や市長、経営者との距離も近く、同じ街で顔を合わせ、時には一緒に飲んで語り合う。そんな距離感の中で、みんなが「どうすれば高知をもっと元気にできるか」を真剣に考えています。

 

行政が支えることはもちろん大切ですが、火をつけるのは民間企業の「まず動く」という姿勢だと私は思っています。民間が一歩踏み出すことで、地域全体が前に進む力になるのです。

 

「地域共栄」のためには、まず高知大丸が積極的にいろいろな挑戦を仕掛けることが何よりも重要だと考えています。私たちが成長しなければ、地域も前に進めません。地域が高知大丸を支えるのではなく、高知大丸が地域を引っ張っていく。そうした覚悟を持って、これからも歩みを進めていきたいと思っています。

 

高知の経営者の方々は、地域を盛り上げたいという同じ熱い思いを持っています。私は百貨店がその核になりたいと思います、と熱を込める小島社長

高知の経営者の方々は、地域を盛り上げたいという同じ熱い思いを持っています。私は百貨店がその核になりたいと思います、と熱を込める小島社長

 

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One More Voice|絵本作家 柴田ケイコさん(パッケージのイラストを担当)

 

 

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私がフリーランスになったとき、インターネットさえあれば、どこにいても仕事ができる環境が整っていました。東京に行く道もありましたが、あふれる情報の中で迷ってしまうより、自然がそばにあって、おいしいものがあって、心がまっすぐになれる場所で働きたかった。そうして選んだのが、生まれ育った高知でした。忙しい日々の中でも、ここにいると不思議と気持ちが整います。何もないようで、何でも生まれていく。高知は、想像がいちばん自由になる場所なんです。

 

今回、「しあわせミルクサブレ」のイラストを描かせていただくことになり、初めて雪ヶ峰牧場を訪れました。広大な土地に、のびのびと暮らす少数のジャージー牛。ちょうど仔牛の出産に立ち会い、自然の中で命がめぐる様子を目の当たりにしました。「ここは、牛を飼っているんじゃなくて、牛の生活をお世話する場所なんだ」というイメージが湧いてきました。そこで、お風呂に入ったり、立って歩いて立ち話をしたりと、自由な牛さんを表現してみました。風の匂い、土の感触、命の鼓動が伝わればうれしいなと思います。

 

高知大丸さんは、私にとって思い入れの深い存在です。個展をしたいと思っていた頃に声をかけていただき、そのご縁でストアイメージを描く機会もいただきました。多くの人が行き交う場所で、自分の作品が誰かの目にふれる。あの瞬間の高揚感と感謝は、今でも忘れられません。

 

だからこそ、今回のように高知大丸さんが地域の生産者と手を取り合い、新しいものを生み出している姿を見て、本当にうれしくなりました。ひとつのサブレに込められた想いが、人と人を、土地と土地を、やさしくつないでいく。そんな輪が少しずつ広がっていけば、高知の魅力も、作り手の想いも、もっと遠くまで届いていくと信じています。

 

<柴田ケイコさんのプロフィール>

今回のプロジェクトで素敵なイラストを描いていただいた柴田ケイコさんは、「めがねこ」シリーズ(手紙社)でデビュー、子供から大人までを夢中にさせる絵本、「パンどろぼう」シリーズ(KADOKAWA)など人気作品の生みの親です。今もふるさとの高知県で創作を続けています。

 

KITTE大阪で開催した雪ヶ峰牧場ジャージー乳 しあわせミルクサブレのサイン会にて

KITTE大阪で開催した雪ヶ峰牧場ジャージー乳 しあわせミルクサブレのサイン会にて

 

 

 

PROFILE

  • 小島 尚

    小島 尚

    株式会社高知大丸 代表取締役社長

     

    1981年に高知大丸入社。ファッション・外商・営業推進・本社出向を経て、2016年に取締役営業推進部長、2022年から現職。高知大丸は、2027年に創業80周年を迎える地域密着型の百貨店であり、「地域のしあわせを提供する地域共栄百貨店」として地元に根ざした価値創造を追及しています。今回のプロジェクトでは、地元ならではの魅力を結びつけて、「全てmade in高知」という価値共創が実現、地方の小規模な百貨店が新たな可能性を生みだし、新たな一歩を踏み出しました。

  • 稲垣 貴之

    稲垣 貴之

    大丸松坂屋百貨店 MDコンテンツ開発第2部 デベロッパー&エディター

     

    2007年大丸入社。東京店紳士雑貨バイヤーやリビング売場マネジャー、JFRカードなどを経て2022年から本社お酒担当。本プロジェクトにおいては、高知のお菓子コンテンツの立案、しあわせミルクサブレの菓子・パッケージの企画開発を主に担当。

  • 田端 優

    田端 優

    大丸松坂屋百貨店 MDコンテンツ開発第2部 デベロッパー&エディター

     

    2024年大丸松坂屋百貨店入社。約10年間洋菓子メーカーのユーハイムで店舗運営、商品企画、テーマパーク土産菓子の企画開発の経験を持つ。本プロジェクトにおいては、しあわせミルクサブレの菓子・パッケージの企画開発、販路開拓を主に担当。

  • 埜口 英一

    埜口 英一

    株式会社 スウィーツ 代表取締役会長

     

    菓子製造販売業界で50年間の経験を持つ。本プロジェクトにおいては、大丸松阪屋様のOEM事業で製品開発及び製造を担当。「地域にある産品の良さを、われわれの技術で加工することで、ブランド価値を高め、生産者の継続的支援と共に成長し産業として根づかせていく。それが私たちの理念です」

  • 野村 泰弘

    野村 泰弘

    雪ヶ峰牧場 牧場長

     

    牛が専門の診療獣医師で、雪ヶ峰牧場の牛の健康管理を担当。「放牧地の野芝の状態や牛の食欲、歩容を常にチェックし、牛の保健維持に努めることで美味しくて栄養満点の牛乳を皆様に提供することが当牧場のモットーです」