1. TOP
  2. FRONT LINE 一覧
  3. 社会と企業の未来を想像する、「2030プロジェクト」。

2023.02.20

社会と企業の未来を想像する、「2030プロジェクト」。

社会と企業の未来を想像する、「2030プロジェクト」。
この春、JFRグループの新しい取り組み「2030年ありたい姿プロジェクト」が始動します。 グループ各社が一丸となって進めるこのプロジェクトは、JFRグループの目指す企業像と、社会に向けてどういった価値を提供できるかの共通認識を、アップデートするために発足しました。 プロジェクトのキャッチコピーは「文化で体温を上げる」。今回は、この言葉を生み出すにあたり行った総勢53名の方へのインタビューや、プロジェクトを社内に浸透させるために作成したキービジュアルに込められた思いについて、プロジェクトメンバーから話を伺っていきます。

(プロジェクトメンバー)

後列左から、社長・好本達也 佐藤 彩子 榎本 高史 中島 実月 小林 啓太

前列左から、近藤 芽奈 立川 俊之 村川佳織  安藤 里奈

 

編集・執筆:阿部 洋子 撮影:林 建次

 

「2030年ありたい姿プロジェクト」が立ち上がったワケ。


 

画像

 

Speaker

榎本 高史|株式会社パルコ 人事戦略部

1999年入社。人財と人件費の最適活用を司る業務を担当。

 

佐藤 彩子|J.フロント リテイリング株式会社 グループ人財政策部

2018年キャリア採用で入社。D&Iや働き方改革などを担当。

 

立川 俊之|J.フロント リテイリング株式会社 経営企画部

2003年入社。JFRグループ中長期経営計画策定、事業会社経営管理に携わる。

 

Moderator

小林 啓太|株式会社パルコ プロモーション部

2010年入社。全国パルコでの営業企画や外部企業タイアップを担当。

 

 

 

 

小林:まずは「2030年ありたい姿プロジェクト」の発足した経緯や、プロジェクトの目的を振り返ってみましょう。

 

榎本:プロジェクトが正式に始まったのは2021年の11月頃ですが、同年4月に中期経営計画が発表された際、「2030年までの長期の方向性は示されているが、次代を担っていく社員の意見がどれくらい反映されているのか」という疑問の声がありました。そこで、好本社長直轄のプロジェクトとして、JFRグループの会社を横断したチームを作ろうということになりました。

 

小林:佐藤さんは人事部から参加いただいていますが、どのようなチームメンバーを集めたのでしょうか。

 

佐藤:こういうプロジェクトって中堅どころ、つまり30代後半から40代が集められることが多いと思うのですが、2030年に主役である世代、社会をリードしていく世代が必須だよねということで、20代、30代をメインにメンバーを選定しました。そのサポート役として、40代のメンバーも参加しています。JFRグループとしてのプロジェクトなので、J.フロント リテイリング、大丸松坂屋百貨店、パルコ、それから主要な事業会社であるJFRカードから、グループを横断する形でメンバーを集めています。

 

立川:実を言うと、プロジェクトの着地点や目的が最初から明確にあったわけではなかったんです。自ら問いを設定するところから始め、いろんな疑問にぶつかりながら、社内へのメッセージづくりとアクションプランに行きついた感じです。集められたメンバーも、出自もキャリアもてんでバラバラで、いい意味で個性が掛け合わされた稀有なプロジェクトになったのかなと思います。

 

 

画像

好本社長を囲んでの最終報告会。好評を受けて、メンバーもほっと胸を撫で下ろしました。

 

 

 

総勢53名へのインタビューから見えた、時代の空気。


 

 

Speaker

中島 実月|株式会社大丸松坂屋百貨店  未来定番研究所

2014年入社。オウンドメディア『FUTURE IS NOW』運営等を通してマーケティングに従事。

 

近藤 芽奈|JFRカード株式会社 カード事業本部商品開発部

2020年入社。カード会員向け優待・ポイント交換アイテム、イベントの組成を担当。

 

安藤 里奈|株式会社パルコ 広報部

2018年入社。対外及び、社内向け広報を推進。

 

Moderator

小林 啓太

 

 

小林:約10年後にあるべき企業像を決めるにあたって、まず考えたのは、そのときの世の中はどうなっているんだろう、ということでした。そこで社内外の有識者の方、例えば大学教授や起業家など、総勢53名の方に、みんなで手分けしてインタビューをすることになったんです。中島さんは特に印象に残ったインタビューはありましたか?

 

中島:そうですね。中でも印象に残っているのは、企業広報をされている30代女性へのインタビューです。「別に誰かに見せたり、外に発信したりするわけでもない、自分だけが知っている“絶対軸の幸せ”を大切にしている」という話に、共感しました。自分自身、世間が思う幸せの形に振り回されることに最近疲れてしまっていたので、その姿勢がとても素敵だなと。また、一般的に幸せとされていることは、この先どんどん解体されていくのではないかと改めて感じました。

 

近藤:私もその方の言葉が心に残りました。「不便だけれど、実は意味があることを見逃したくないと思っている。数の論理と効率で動くのではなく、むしろ非合理を大事にしたい」というフレーズが印象的でした。極端な例ですが、今は電車が当たり前に走っているけれど、昔だったら人は歩くしかなかったわけですよね。同じ道のりでも、歩いていたら気づいたはずのもの、つまり失われた風景が今の時代にはあふれているのではないでしょうか。私はこのプロジェクトに参加しているメンバーの中で一番年下なのですが、私たちが生まれたときはすでに「失われている」状態がデフォルトでした。だからこそ、それ以前を知らない私たちの世代が失われたものに気がつくことで、新しいものが生まれてきたり、チャンスが広がったりすることもあるんじゃないかと思うんです。 また、他にも「無駄なものが排除されがちな世の中だけれど、その無駄なものにこそ価値があるよね」という考え方を持たれている方が、すごく多かった印象がありました。物質的に満たされている世の中で、今後はそういう「無駄な部分」こそが、改めて重視されていくのかなと感じましたね。

 

小林:安藤さんは、インタビューの中で印象に残った言葉はありましたか?

 

安藤:私は20代の起業家の方の言葉が印象的でした。今、ウェルビーイングという言葉が世の中にあふれていますが、定義が曖昧ですよね。その方は「自分が考えるウェルビーイングは、自分と向き合い内省できている上で、世の中がgiveで回っていること」とおっしゃっていて。また、「優しさはkindやtenderとノットイコールであって、generous(寛大さ)とイコールだ」ともおっしゃっていました。generous、つまり寛大だからこそ、自分自身にもそうだし、他者にもgiveするべきということなんですね。

めまぐるしく変化する世の中で、つい周囲のことばかりを追ってしまいがちですが、外ばかり見ていると自分の変化にすら気がつけないこともあるんじゃないでしょうか。他者に対してgenerousな気持ちを持つためにも、自分と向き合う時間を日常の中に取り入れていきたいなと思いました。

 

 

画像

本プロジェクトのキービジュアル。アートディレクションは田部井美奈さん。

 

 

 

「文化で体温を上げる」キービジュアルに込めた思い。


 

画像

 

 

Speaker

比留間 由依|株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部

2009年入社。新規事業開発、ショールーム店舗「明日見世」を担当。

 

村川 佳織|J.フロント リテイリング株式会社 デジタル推進部

2010年入社。デジタル人財育成プログラムの構想・計画策定・実行を担当。

 

Moderator

小林 啓太

 

 

 

小林:このようなインタビューを集約していき、3つの未来の社会像を導き出しました。まず1つ目は、心が満たされていくもの、自分自身が夢中になれるものの価値がより大切になってくるという社会像です。高度経済成長期からそれなりに時間が経過した現在は、物質的には豊かとされています。だからこそ心の豊かさにつながるものが重視される社会になっていくだろうと。

2つ目は、「明日のために種をまく」価値観を重視する社会像です。今儲かればよい、ただ企業として大きくなればよいという短絡的な姿勢ではなく、いかに世の中に貢献していくか、個人の行動でいかに世の中をよくしていくか、という点にフォーカスしました。

そして、3つ目は、孤立や孤独が深まっていると言われる現在だからこそ、コミュニティが重要になっていく社会です。当たり前のようにダイバーシティや多様性という言葉があちこちで使われていますが、わからないことを受け入れていく許容性や「generous=寛大さ」は、ますます重要になっていくと思います。

この3つが、未来に向けて私たちが見据えた社会像であり、持つべき価値観として導き出されました。そこから新しい価値観やライフスタイルを提案していくにあたって、「文化で体温を上げる」というキャッチコピーを考えたんです。

「文化」という言葉は、物質的な充足や効率化を意図する「文明」と対比して、非効率でも倫理的であることを重視したいという姿勢を表しています。音楽やエンターテインメント、アートのような「文化」は、別になくても死なない、いわゆる“無駄なもの”。けれども、それによって多くの人の心が満たされています。だから私たちは「文化」こそが、自分たち自身の体温も、世の中の体温も上げることができる、というメッセージに結びつきました。

 

小林:キャッチコピーが決まったところで、それをビジュアルで視覚的に伝えようということになりました。比留間さん、村川さん、その過程はどういったものだったのでしょうか?

 

比留間:ビジュアルを制作してくださるアーティストの選定から始まりました。とはいえ、コピーから導き出されるのは抽象的なイメージですから、まずはディスカッションを通してメンバー内で少しずつ具体化をしていきました。「どんなビジュアルがいいか?」という問いは漠然としていてなかなか難しかったので、逆に「違うものってなんだろう?」という問いを立てて、意見を集めました。そうすると「奇抜なものは違うよね」とか「多様性をしっかり表現してくれる方だよね」とメンバーから意見が出てきて。「文化で体温を上げる」というコピーから感じる、じんわり温まるイメージが伝わる画風の方がいいだろうということになりました。

 

村川:そして最終的にデザインは田部井美奈さん、ビジュアルは画家の中島あかねさんに依頼することになったんですね。「文化」という言葉はいろんなものを包括しています。また、これからの社会も多様性を認め合うことがより大切になってくる。そして、私たちの活動も会社やいろんな事業を超えて集まったメンバーが中心となっています。そういう中で、キャッチコピーを捉え直したときに、中島さんの水彩画の画風はとてもマッチしていますよね。いろんな色が混じり合って、ひとつの社会を作っていく。そんな思いが伝わる作品になったと思います。

 

小林:さらに、メッセージをより体感してもらうために、もう一歩先の取り組みとして3つの企画が立ち上がりました。ひとつが、全国各地の施設に関わりのあるクリエイターの方々がデザインするオリジナルのプランター(植物栽培キット)。もうひとつが生ゴミを堆肥に変えるコンポストと屋上菜園づくり。3つ目が会社や部署を越えて、自分のやりたいプロジェクトを企画・発表し、優れたアイデアには全社を巻き込んで支援する体制を作り出す「RED」という場の創出です。ぜひこちらも楽しみにしていてほしいです。

 

画像

 

 

 

画像

中島あかねさんによる原画。温かみのある色合いや、植物の「芽」を連想させる力強いフォルムが印象的。