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2023.05.29

​​​GINZA SIXにゲームの世界を拡張。​​リアルメタバースの可能性を探る

​​​GINZA SIXにゲームの世界を拡張。​​リアルメタバースの可能性を探る
J.フロントリテイリング(以下、JFR)は、GINZA SIX 「銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM」で、2023年4月21日から23日の3日間にわたり、人気ゲーム「Identity V 第五人格」の世界をリアルに拡張したイベント「SCARZ Real Metaverse with Identity V powered by STYLY」を開催しました。 メタバース ・web3プロジェクトの一環であるこのイベントでタッグを組んだのは、プロesportsチーム「SCARZ」を運営するJFRグループのXENOZと、CVC出資先企業でメタバーステクノロジーを開発するPsychic VR Labの2社。イベントの開催に深く関わった各社のキーパーソン4人に、企画の背景や狙い、手応えを語ってもらいました。

取材・執筆:末吉陽子 撮影:藤原葉子

 

世界が次に望むもの、唯一無二のリアルメタバース創出へ


 

――今回のイベントは、プロesportsチーム「SCARZ」と人気ゲーム「Identity V 第五人格」のコラボにより、目の前にゲームのキャラクターが出現したかのような感覚を得られるXR(現実世界と仮想世界の融合)体験「Identity V XR」、SCARZ選手キャラクターとのチェキ撮影、SCARZの新作オリジナルアイテムの販売を実施されました。企画が立ち上がった背景を教えてください。

 

 

洞本 宗和(J.フロント リテイリング・以下、洞本/JFR):当社は、メタバースやweb3の市場の可能性を探るため、2022年11月からプロジェクトをスタートさせました。2023年3月には、専任の組織が立ち上がり、事業の本格化に向けた検証を進めることになりました。メタバースやweb3の領域は幅広いのですが、まずはリアルとデジタルの融合「リアルメタバース」にフォーカスすることに。理由は、われわれの強みであるリアル店舗にバーチャル・テクノロジーを掛け算することで、価値を増幅できると考えたからです。また、社内の議論を通して「今の時代感覚を踏まえると100%バーチャルの世界に没入する体験を提供するよりも、現実世界の要素があるリアルメタバースのほうが、幅広い人に受け入れられるだろう」という結論に至りました。

 

こうした流れを受けて、都市空間と連動して現実とバーチャルが重なり合うXRコンテンツを制作するPsychic VR Labとタッグを組み、色々な施策の検討を進めました。その中で、「Where Luxury Begins 世界が次に望むものを」というブランドスローガンを掲げ、当社グループが運営するGINZA SIXは、リアルメタバースの世界観を体現する場所として最適だと考え、場所から逆算して実現したい企画を詰めていきました。

 

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洞本はJFRデジタル推進部専任部長として、メタバース・web3プロジェクトの戦略に携わる

 

――「リアルメタバース」は、とても新しい概念であり、実際に体験してこそ価値や面白みを肌感覚で理解できるものですよね。

 

畔柳 亮(Psychic VR Lab・以下、畔柳/PVL):われわれは、日常生活の延長線上に重なるようなデジタル体験のことを広く捉えて、リアルメタバースと呼んでいます。メタバースはゲームでイメージすると分かりやすいですが、リアルメタバースはゲームだけではなく、物理的な体験の一部をデジタルに置き換えるイメージです。それにより臨場感が増したり、リアルと連動してコンテンツの世界観を感じられたりする点が、リアルメタバースの価値だと考えています。

 

現状、リアルメタバースはスマートフォンやゴーグル型の端末を装着した状態での体験に落ち着いていますが、もっと気軽に装着できる端末が登場したら、街を歩きながら現実のモノに仮想現実を重ね合わせる体験ができるもしれません。今回のイベントは、そうした可能性を広げる側面を持っていたと思っています。

 

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XRクリエイターや各都市と連携し合いながら『リアルメタバース』を推進しているPsychic VR Labの畔柳氏

 

 

イベントの基軸は「推し活」。eスポーツファンを笑顔にしたい


 

――イベント内容の具体化にあたり、どのような部分にこだわりましたか?

 

小林 由香(J.フロント リテイリング・以下、小林/JFR):JFRグループのアセットやリソースでシナジーを生み出すことにこだわりました。JFRグループには、XENOZが運営するeスポーツチーム「SCARZ」という強力なコンテンツがあります。また、SCARZから紐づくかたちで、チームメンバーがプレイしている人気のゲーム「Identity V 第五人格」があり、この2つはリアルメタバースとの親和性が高いので、活かさない手はないと判断しました。

 

役割分担としては、PVLがリアルメタバースの制作を担当、イベントの内容はSCARZのファン心理を熟知しているXENOZが担当、市場の可能性・集客力・マネタイズの検証をJFRが担当する、というかたちです。イベントはPoCを大事にしたかったので、各社の担当領域を明確にすることを意識しました。

 

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小林はイベントの企画から運営まで幅広く担当

 

――SCARZは色々なゲームをプレイしていますが、なぜ「Identity V 第五人格」を選ばれたのでしょうか?

 

洞本/JFR:「Identity V 第五人格」は、サバイバー(逃げる側)とハンター(捕まえる側)にわかれて対戦するゲームで、ストーリーの要所で本が出てきます。イベントの開催はGINZA SIXの蔦屋書店に決まっていたので、「本」のつながりによる世界観の相性の良さがコラボの決め手になりました。

 

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「Identity V XR」を体験中の様子。周囲から見ると何も配置されていない空間だが、実際にそこにないものを現実世界に重ね合わせて表示できるMRゴーグルを装着すると、まったく異なる光景が広がっている

 

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こちらがMRゴーグルを通じて、見えている光景。場所を移動するごとに、SCARZ選手が利用している第五人格のキャラクターが一体ずつ次々と出現。SCARZ選手のコメントも合わせて表示される。キャラクターを横や後ろから見れるとあって、ファンからは大反響だった

 

 

山田紗也葉(XENOZ・以下、山田/XENOZ):SCARZには、ゲームのタイトルごとに部門があるのですが、特に「Identity V 第五人格」の部門はファンの熱量が高く、推し活文化の流行もあって熱狂的な女性ファンが圧倒的。リアルイベントに足を運んでくれる女性ファンも多いので、今回のようなリアルメタバースのイベントは受け入れられる自信がありました。

 

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普段、SCARZのグッズ企画・販売を担当、ファンの心理を熟知している山田は、今回のイベントの企画から参加

 

――プレイヤーとゲーム、それぞれのファンに刺さるイベントを目指されたわけですね。

 

洞本/JFR:最初、今回のイベントで一番笑顔にしたい人は、まずSCARZのファン、次にeスポーツのファンを考えていました。eスポーツから縁遠い人には、ターゲットがニッチ過ぎるのではと懸念されがちですが、今やeスポーツのファンは国内に743万人(※1)存在し、増加傾向にあります。Jリーグのファン788万人(※2)に鑑みると、eスポーツの勢いを理解できます。以前、eスポーツの大会を視察したのですが、会場のインテックス大阪は満席で、10~20代が圧倒的に多く、それもかなりの熱量だったんです。われわれとしても、この層と繋がりたいと改めて実感しました。

(※1)出典:日本eスポーツ白書2022/角川アスキー総合研究所 (※2)出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルによる共同調査

 

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イベント期間中はSCARZ選手がサプライズで登場。物販では選手の写真やグッズを販売

 

 

小林/JFR:SCARZやeスポーツのファンの方は、すでにリッチなXR体験を知っているイメージなので、どのようなイベントを実施したら喜んでもらえるのか、最初は掴みきれていませんでした。でも、大会の視察を通して、eスポーツはゲームのタイトルによって客層が大きく異なることをよく理解できました。SCARZと「Identity V 第五人格」の特性を踏まえて、最終的にイベントの方向性を「推し活文化」に着地させました。

 

畔柳/PVL:僕は「Identity V 第五人格」のリリース時からプレイしてきたので、特異なことをしなくても、ファンは喜んでくれるだろうなと思っていました。タッグを組んだ3社で色々な切り口を模索しましたが、最終的にXR体験は美術展示のような内容に決まったのは正解だったと思います。制作チームとしては、なるべく動きを制限しないで、かつ人同士がぶつからないで安全に体験できる導線設計や環境づくりに注力しました。

 

 

商業施設に余白の空間を。リアルメタバースに寄せる期待


 

――イベントの開催は3日間と短期間ながらも、たくさんの方が来場されたそうですね。反響についてお聞かせください。

 

小林/JFR:XR体験については盛況で、集客力の強さを実感しました。来場者アンケートでは、お客様のうち約8割が「次回も同様のイベントに来たい」と回答してくださり、そこにはSCARZの選手や「Identity V 第五人格」を応援したいという熱量が反映されていると考えています。

 

山田/XENOZ:印象的だったのは、XR体験で「キャラクターの後ろ姿を見ることができた」と喜んでもらえたことです。「Identity V 第五人格」は基本的にスマホでプレイするので、小さい画面かつ二次元でしかキャラクターを見ることができません。ゲームのファンにとって、目の前に好きなキャラクターが実物大で出現する経験は、とても貴重だったはずです。

 

また、リアルメタバースとは少し離れますが、SCARZ選手キャラクターとのチェキ撮影も好評でした。選手と並んでチェキを撮ることはあっても、SCARZ選手のキャラクターと撮影する機会はほぼありません。ちなみに、これまで「Identity V 第五人格」のグッズを制作してきた中で、一番売れたのは選手単体のチェキで、ファンの皆さんは何枚も購入されます。その光景を見てきたので、キャラクターとの2ショットも絶対欲しいだろうなと思っていたのですが、やはり喜んでいただけたようで手応えを感じました。

 

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こちらのチェキはSCARZ選手キャラクターとの2ショット。3日間でのべ200枚以上撮影

 

 

――まるでアイドルのようですね。チェキというアナログなアイテムと、キャラの融合が斬新です。ファン同士でもチェキを見ながら盛り上がれそうですね。

 

山田/XENOZ:個人的に一番嬉しかったのは、イベントのレポートを漫画にしてSNSで発信して、拡散してくださった来場者がいたことです。会場ではファン同士で交流する姿も見られて、人と人の出会いを創出できたのは大きな価値だったと思います。

 

畔柳/PVL:山田さんがおっしゃるとおり、ファン同士の交流機会の創出は、リアルメタバースの価値だと思っています。コンテンツとしての面白さはもちろん重要です。ただ、一人きりの体験だけではなく、周囲の人と同じものを見て、共感したり感想を語り合ったりする体験に昇華できることこそが、リアルメタバースならではの価値につながります。リアルメタバースは、人と人とが何かを共有するきっかけになる要素を含んでいることが必要だと思っています。

 

――リアルメタバースをテーマにした今回のイベントが、時代を捉えたユニークネスと新規性を兼ね備えたイベントだったということを、とてもよく理解できました。では、最後に今後のメタバース・web3プロジェクトの展望をお聞かせください。

 

洞本/JFR:空間の価値を拡張させるリアルメタバースの企画は、積極的に展開していきたいと思います。かつて百貨店の屋上には遊園地があって、そこで遊んで、買い物やご飯を楽しむことが、特別な時間であり、皆の当たり前でした。ところが、30年くらいの間に、店舗運営の効率化が進み、百貨店などの商業施設に余白の空間が少なくなってしまいました。そんな今、今回のイベントを実施して、XRが空間を拡張させ、そこに新たな余白を生めることを実感しました。

 

今回のイベントは、実証的な位置づけであり、リアルメタバースのほんの入り口に立つことができたくらいだと考えています。今後は3社の座組みをベースに、企画の精度をさらに高めて、リアルメタバースをはじめとするメタバース・web3をきちんと収益化できる事業にすることを目指していきたいです。

 

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PROFILE

  • 洞本 宗和

    J.フロント リテイリング株式会社 グループデジタル統括部 デジタル推進部 専任部長 メタバース・web3担当

     

    婦人服のバイヤー、大丸情報センター(現 JFR情報センター)でSE、大丸松坂屋百貨店本社でのデジタルマーケティング・販促広告担当、上海新世界大丸百貨のマーケティング担当などを経て、22年9月より現職。これまでのデジタル活用経験を新たなメタバース・web3領域の推進へ生かす。今回のイベントでは、組織編成・予算管理など全体を統括。

  • 小林 由香

    J.フロント リテイリング株式会社 グループデジタル統括部 デジタル推進部 スタッフ メタバース・web3担当

     

    大丸松坂屋百貨店で人事、EC、マーケティング、経営企画などを経験し、23年3月より現職。百貨店でのバーチャルマーケット出店の経験を活かし、メタバース領域や、新たな購買・体験価値の推進を目指す。今回のイベントでは、企画から運営を統括。各コンテンツの進捗確認や会場運営など全体を管理。

  • 山田 紗也葉

    株式会社XENOZ コミュニケーション部 執行役員

     

    コミュニケーション・広報管轄。元々SCARZのファンであり、ストリーマーとして所属。21年2月に入社し、ファン目線を理解できる立場として、グッズ製作やコミュニケーションによって、ファンを増やす活動を行う。今回のイベントでは、SCARZのグッズの企画・販売、「Identity V 第五人格」を運営するネットイース社の窓口を担当。ファンの心理を熟知しているため、イベント内容にも助言。

  • 畔柳 亮

    株式会社Psychic VR Lab  City-XR事業部 テクニカルディレクター

     

    XRを制作できるプラットフォーム「STYLY」を運営するPsychic VR Labでテクニカルディレクターとして、現実の都市空間を体験型メディアへと拡張させる『都市型XRエンターテインメント』の企画・制作に携わる。Google にて、AdSense、Android のテクニカルサポートを担当した後、起業、フリーランスエンジニアを経て、2019年 6月から現職。今回のイベントでは、「Identity V XR」の制作責任者を担当。現実空間にゲームの世界観の落とし込みを追求。