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2023.03.13

新しいコミュニティが広がる。「2030プロジェクト」コンポストコミュニティとは?

新しいコミュニティが広がる。「2030プロジェクト」コンポストコミュニティとは?
この春スタートした、JFRグループの新しい取り組み「2030年ありたい姿プロジェクト」。グループ各社が一丸となって進めるこのプロジェクトは、「文化で体温を上げる」というキャッチコピーを掲げ、JFRグループの目指す企業像と、社会に向けてどういった価値を提供できるかの共通認識を、アップデートするために発足しました。今回は、「文化で体温を上げる」ことをより体感するために立ち上がった3つの取り組みのうち、コンポストコミュニティ企画について、大丸松坂屋百貨店の中島さんにお話を伺っていきます。

執筆:阿部 洋子

 

コンポストは文化。LFCコンポストで広がるコミュニティ。


 

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――まず初めに、コンポストプロジェクトの概要をお伺いできますか?

 

中島 実月(以下、中島):今回の「2030年ありたい姿プロジェクト」のキーメッセージである「文化で体温を上げる」を、JFRグループの社員の皆さんが生活の中で実践できる取り組みとして、パルコの安藤さん、JFRカードの近藤さんとコンポストコミュニティの企画を立ち上げました。目的としては、家庭用のコンポスト(=堆肥づくり)を通じて、社員一人ひとりが暮らしに新しい気づきを得たり、社内の人々とのつながりをつくったりするきっかけになるのではと思っています。

 

というのも、私自身がローカルフードサイクリング(以下、「LFC」)という会社が開発する「LFCコンポスト」に出会い、コンポストのおもしろさや現代での意義深さに触れて、ハマったことが発端でした。コンポストは、ものすごく原始的な生活様式です。日本で言うと、ごみの焼却システムは明治時代にできたものなので、太古の昔から生ごみというのは土に還すものでした。江戸時代には、「金肥」と言われたように、人の糞尿をはじめ肥料はお金を出して買うものとして経済が回っていたんです。大丸松坂屋百貨店も、江戸時代から300〜400年続いてきた企業であり、おそらく堆肥にも触れながら先代の人々から今日まで企業の歴史を受け継いできたわけです。それってすごく文化的な体験ですよね。それをこの現代の生活様式とうまくマッチさせているのが家庭用のコンポストだな、と思います。

 

驚いたのが、生ごみを分解していく過程で実際にコンポストの温度が上がるんです。場合によっては、微生物の働きで温度計が50度を差すこともあるんです。それってすごいじゃないですか! その面白さに、私自身も体温が上がった感覚があったんですよね。

 

――具体的には、どのように活動を広めていく予定ですか。

 

中島: まずはJFRグループ内で「LFCコンポスト」を紹介し、社内ユーザーを募る予定です。生ごみを堆肥に変えること自体は、日本に古くから伝わる文化ですが、LFCコンポストはバック型のコンポスト。見た目もかわいらしくて始めやすいところが魅力です。また、通気性や水はけに優れた特殊素材を使っているため、マンションのベランダなどにも置けて、都市生活でもすぐに始められるんです。

 

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LFCコンポスト

 

――コンポスト初心者にも始めやすそうですね。

 

中島:そうなんです。LFCコンポストの場合、バッグの中に直接、堆肥の元となる基材 が入っていて、生ごみを入れて混ぜるだけで堆肥化してくれます。バッグ型でファスナーがついているため、虫がつきにくく、臭いもしにくい。現代生活で敬遠されやすい点にも配慮されています。
それから私自身、ポイントだなと思っているのが、週に数回、土全体を自分でかき混ぜて堆肥化していくという点です。自分が出した生ごみが、土に還る様子を見ることができるのは、都市生活ではなかなかできないすごく面白い体験です。ぜひ体感してほしいですね。

また、手元にできあがった堆肥が残るため、次の新しいアクションにつながっていくことももうひとつの魅力。ベランダで植物を育ててみるのもひとつですし、余った分はLFCさんが主催する「堆肥回収会」で回収してもらうこともできます。この「堆肥回収会」も面白くて、ユーザー同士のコミュニティになっているんです。

 

というのも、堆肥化は人によってそのプロセスが異なります。食べるものが違えば、出る生ごみも違う。そこに個性が現れるんです。例えばお肉や油っぽいものを食べる人は分解がとても早かったり、野菜中心の食生活を送っている人は、分解が緩やかだったり。できる堆肥もしっとりしていたり、からっとしていたり、人によってさまざまです。「堆肥回収会」では、お互いの堆肥を見合って話をすることで知らない人とでも仲よくなれます。コンポスト愛好という共通の価値観があるので、話も盛り上がりやすいんですよね。
私も実際、LFCコンポストに出会ったときに、コミュニティづくりにぴったりな ツールだなと、まず感じました。今回、「文化で体温を上げる」というキーメッセージが決まり、それを皆さんと共有するために、コンセプトを体感できるものとしてLFCコンポストが自然に結びつきました。

 

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自分のコンポストを持ち寄って好本社長と盛り上がるプロジェクトメンバー。

 

――今後は、グループ内にコンポストのコミュニティをつくっていくんですか?

 

中島:そうですね。今までは部署単位での交流や、肩書きが先行してフラットに話しづらい状況がありました。コンポストという共通のツールが、新しいつながりや仲間を見つけるきっかけや、新しいことを始めてみたいという原動力にもなるんじゃないかと思っています。

 

――オンラインコミュニティもつくる予定とお聞きしました。

 

中島:はい、専用のアプリを使って、JFRグループ社内限定のオンラインコミュニティをつくる予定です。ポイントは、匿名であること。社内ツールを使うと、名前や肩書き、所属部門などにコミュニケーションそのものが紐づいてしまいがち。そこで、社外のサービスを利用して、しかも匿名で行うことで、純粋に自分の関心に基づいた交流を提供できたらいいなと思っています。

 

 

 

コンポストのさらなる可能性。


 

――つくった堆肥を使う場などは考えていますか。

 

中島:手元に残った堆肥をどう使うか?の一例として、LFCさんのお力をお借りしながら屋上菜園をやることにしました。幸いなことに私達は実店舗を多く持っているので、まずは 松坂屋上野店の屋上でトライさせてもらうことになりました。毎日水やりをする必要があるので、参加者みんなでシフトを組み、野菜ができあがったら収穫祭を開いて、みんなで採って、まずは食べてみる。自分の生ごみから野菜が生まれたということを実感する会を開催したいと思っています。そこから先はまだ妄想の段階ですが、収穫したものが、地域のレストランやカフェでご飯やスイーツに変わるということも考えられますし、さらに価値あるものに生まれ変わるという体験もできたら面白いですよね。
ほかにも今はまだ首都圏でしか実施できていないので、「自分達のところでもやりたい」という地域が手を挙げてくれて、堆肥の循環のひとつとして菜園ができていったらいいなと思っています。

 

――このプロジェクトを通して、グループ社員の方々へどんな思いを届けたいですか?

 

中島:私自身コンポストを通して、今まで捨てていた生ごみが、土に還っていく過程を見て、食べ物や生き物に対する眼差しが変わったんです。言ってしまえば、同じ生き物がこのバッグの中でうごめいて、私たちが食べたものを分解してくれているというのを知って、世界の見え方が変わったんですね、ちょっと大げさで照れくさいですけど(笑)。
大量生産やごみの焼却処理システムといった効率化の名の下で目を背けてきてしまった現状があると思うんです。そういう失ってしまったプリミティブな視点を取り戻すことによって、今まで見過ごしていた、実は目の前にあるさまざまなことに改めて気付けたらいいんじゃないかなと思っています。それから、単純にコンポストって面白いなと思える機会になったら嬉しいですね。

 

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LFCの社員のみなさんとコンポスト菜園を設置した際の様子。

 

中島 実月(写真左から3人目)
株式会社大丸松坂屋百貨店 未来定番研究所
2014年入社。オウンドメディア『FUTURE IS NOW』運営等を通してマーケティングに従事。